『生存ハンドブック』出版記念イベント

Esaman2009/09/02  『生存ハンドブック』出版記念イベントが9月1日、東京の阿佐ヶ谷ロフトで開催されました。100人近くが集まり、最近の「ロスジェネ論壇」や「ナショナリズム問題」などについて、会場を巻き込んでのトーク(バトル?)となり、目の覚める内容となっていました。

第3部の様子。パネラーは左から清水直子、園亮太、萱野稔人、田野新一(東京・阿佐ヶ谷で9月1日夜、筆者撮影)
第3部の様子。パネラーは左から清水直子、園亮太、萱野稔人、田野新一(東京・阿佐ヶ谷で9月1日夜、筆者撮影)

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関連サイト: 『生存ハンドブック』出版記念イベント

名古屋 いまだ追い詰められて生活保護申請

Esaman2009/03/20
名古屋市の中村区役所には、派遣切りや雇い止めに遭った相談者の列が続いている。16日と17日、中村区役所に来た人たちから話を聞いた。突然の申し渡しで、たちまち住まいをなくすが、手持ちのお金を大事に使い、仕事先を見つけようと動き回る。だが、どこにも仕事はない。そうこうしている内に、お金が尽きて野宿生活。そんな時、区役所の支援活動を聞いて、駆け込む……。こうしたケースを何人も話した。相談窓口を開設している役所に行ってみてはどうだろうか。ほんの一部だが、そんな情報も付け加えた。

http://www.news.janjan.jp/area/0903/0903189612/1.php

荷物を抱えてやってきた相談者に、生活保護の申請の仕方をおしえる支援ボランティア。その様子を取材するマスコミ。(17日撮影)荷物を抱えてやってきた相談者に、生活保護の申請の仕方をおしえる支援ボランティア。その様子を取材するマスコミ。(17日撮影)

 3月16日と17日、年始以来、生活相談の人たちの列が続いている名古屋市中村区役所に行ってきました。16日は月曜日ということもあって101人、新規の人は26名。17日は68人、新規の人は13人でした。

 ここしばらくの平均の相談者は、80人前後だそうです。人数だけを聞いていると、少し落ち着いたのかな、という気もしましたが、中村区役所の対応が手馴れてきて、スムーズになったこと、2回目以降の相談を他の区役所にまわして、相談者を分散させている、ということなどもあり、中村区役所にばかり集中しなくなった、ということも原因のようでした。

 しかし、実態をみると、依然、中村区役所周辺の緊急宿泊施設となっているドヤ(※1)は満室状態。住むところが無く、相談に訪れた人は即日、生活保護の人達向けに作られた、不動産業者の経営しているマンションに向かうことが多いようです。

 このマンションには「貧困ビジネスではないか」という批判もあるわけですが、他に選択肢もほとんどありませんので、利用せざるを得ませんし、緊急宿泊施設のドヤよりは、食べ物はよい、とのことでした(ドヤの場合はパン、カップ麺、コンビニ弁当が出る)。

 この建物は、最近つくられたもので新しいそうです。6畳ほどの個室がたくさんあり、テレビもあるそうですが、風呂とトイレは共同。食事は朝と晩、食堂に集まって食べるそうです。門限は22時。夕飯は17時半〜18時ころ(施設が複数あり若干違う)。寮のようなところだそうです。

 個室でのタバコは禁止。個室での飲酒も、以前はOKだったようですが、いろいろとあったようで禁止だそうです。職員の対応は、横柄だった、という話もありますし、そうでもない、という話もあります。

 生活保護の申請をした人は、以前は申請の手続きの2週間のあいだ、緊急宿泊施設に泊まりながらマンションを探していたのですが、最近はドヤも満杯なので、即日からこのマンションに泊まり、自分の住むアパートを探す例も多いようです。

 生活保護のお金も、2週間を待たずに出る場合もあるそうです。仕事は依然ありませんが、生活保護をとっても早期自立を目指してほしいので、職安には週に2回程度は通ってください、ということでした。

 生活保護の基準額である35000円程度以下のアパートをみつけたら、敷金礼金などは役所が出してくれるのでアパートでの生活に切り替えることができます。さきほどの生活保護の受給者専門のマンションの場合、食費などいろいろと引かれて、手元に残るのは15000円ほどですから、自炊のできる人の場合は、アパートに入居して生活したほうが、効率がよいようです。

 アパートは、申請者の好きな区でよく、最終的に見つかった区での生活保護に切り替わるとのことで、中村区役所にばかり集中しないようにしているようでした。また、連日、人が押し寄せている中村区役所の相談コーナーには、すでに不動産業者の人が何人も待っていて、生活保護の基準額で入れるアパートを紹介するサービスも行っていました。

 「泊り込み事件」などが発生していた当時に比べると、負担を分散させる工夫や、業者などの連携(?)もあり、手際がよくなっているな、と思いました。実際、そのような感じですが、連日の相談の列は、まだまだ続いています。

生活相談窓口の様子。最初の相談以後は、ほかの区へも分散しているので、中村区役所に並ぶ人たちは、少し減っている。不動産屋さんも待機している。(17日撮影)生活相談窓口の様子。最初の相談以後は、ほかの区へも分散しているので、中村区役所に並ぶ人たちは、少し減っている。不動産屋さんも待機している。(17日撮影)

 現場で、詳しく話を聞きましたので紹介します。

●10月には契約更新の話も出ていたが、11月に突然、雇い止めに。

 30代後半。トヨタ系の住み込み派遣の仕事をしていた。現場の工場は名古屋市近郊だが、寮は名古屋の中心にあって、立地は良かった。10月くらいまでは、まだ景気が良くて、契約期間更新の話もでていたが、11月に雇い止めの話になった。12月に契約が更新されずに解雇。1月になって寮を出た。半年ごとに契約更新で、1年間働いていた。その工場は給料は良くて、いろいろ引かれた後の手取りで25〜26万。社員食堂での昼食代は半分は会社が出していた。食費は月に14000円ほどかかっていた。

 その以前に働いていた会社も住み込み派遣で、そこは日払いで5000円もらい、残りは寮費などを引かれ、手元に残るのは月に1〜2万しかなかった。全部あわせると、手取りでは、12〜14万ほどだった。そこで働きつつ、今回解雇された工場を見つけて移ることにした。

 トヨタ系の工場の仕事があるときは、それほどヒドイ状況ではなかったし、今回解雇されてしまった工場は、給料も待遇も結構よかった。10代で働き出して、工場に12年ほど勤めて、それ以後8年ほどの間に、5〜6回職場を変わった。すべて住み込み派遣だった。

 でも、解雇されても次の職場はすぐに見つかったし、場合によっては、今回解雇された工場のように、よりよい条件のところを探すこともできたときもあった。しかし、今回は全く仕事がなくて、路頭に迷ってしまった。

●トイレで拾ったチラシをみて、ホームレスの人に励まされて…

 三河地方の、トヨタ系の自動車部品を作っている工場で住み込み派遣で働いていた。昨年10月の末に派遣の期間が切れて解雇になった。それまで2年以上普通に働いていて、自動的に更新されていたが、夏から9月ころまで、まったくそんな気配も無かった。実際には現場の班長も知らなくて、本社からの指示がきてから、更新されずに解雇になることを知ったようだった。10月の頭に期間満了で雇い止めだと聞かされ、10月末の解雇とともに寮を追い出された。

 働いていたときの給料は、総額で25〜26万弱。寮費が5万5000円、他にもいろいろ12万円以上引かれて、手元には12〜13万円残るだけだった。それでも、8月などは、まだ残業もあり、それなりの給料だったし、解雇されるとは、現場では、ほんとうに誰も思っていなかった。寮を追い出されたときには、手元に20万ほどあったので、それがなくなるまでに仕事が見つかるだろうと思い、名古屋に移動した。

 ところが、仕事がまったくみつからない。派遣会社にも4つほど登録したが、仕事はないし、情報誌にも、いつも同じところがほんの少し載っているが、自分が働けるようなところは、まったくなかった。同じ時期に解雇された友達から、名古屋にいったら仕事があるのかと電話があったけども、まったくないよ、と教えるとびっくりしていた。同僚には、東北、北海道、沖縄の人がとても多くて、気軽に帰れない人達ばかりでした。

 お金がある間は、ネットカフェやサウナなどを泊まり歩いて仕事を探していました。12月ころになると、テレビなどで派遣切りのことが話題になっていたけども、それを見ながら「気づくのが遅いよ」と思ったのを覚えている。手持ちのお金を節約しながら、ネットカフェなどを泊まり歩いていたけども、それも底をついて、なんともならなくなってきた。こんなに長い間、仕事が見つからなかったのは初めて。

 失業保険が何ヵ月か出るのですが、住所が無いので申請ができないでいた。職安で相談したところ、よく行くネットカフェを住所として申請してもよい、ということだったので、申請をしたけども、認定されてお金がおりるのは、1ヵ月ほど先。既にお金も手元に無く、どうしたらいいかなと思って、何日か野宿していたところ、駅のトイレにおちていた中村区役所の支援の紙を見て、公園でずっとホームレスをしている人に聞いてみたら、そういう相談をやっているらしいから、申請にいくといいよと励まされ、バンとジュースをもらった。とてもうれしかった。

 失業保険が出るまでの1ヵ月ほどの間だけでよいので生活保護を、と申し込んだら、すぐに出ることになった。敷金と礼金、家具を用意するお金が少しいるので、とても助かる。さすがに失業保険だけでは、敷金礼金は払えないし、住所がないと、ごはんを食べるのも割高になるし、寝ているだけでもお金が減っていき、10万円ほどのお金も、あっという間になくなる。トイレでチラシを拾えて、とてもよかった。

●日勤・夜勤を連続勤務。鳶職の仕事を肩代わりしても賃金は変わらず…ある土工さんの話。

 土工として、寮のある会社で働いていた。その会社では土工は日当9000円。鳶職は13000円。土工も鳶職も、日当から寮費や食費などで2500〜3000円とられる。鳶職は高いところで作業をするし、仕事も違うのだから給料が違うのは当然だと思う。

 ところが、自分は土工なのに鳶職の仕事をさせらたことが何度もあったのに、給料はそのまま、ということが何日も続いた。挙句の果てには、日勤を終えて帰ってきたら、次にそのまま夜勤の仕事につかされるということが続いた。1日おきにそんなことがあった。これでは体が持たない。

 そうかと思うと、仕事が全く回ってこない日もあった。仕事はあるのだが、古い人を優先していれているので、自分まで仕事が回ってこない。最後の月には、月に10日ほどしか仕事がなかったし、1週間全く仕事がない日もあった。そんなときでも、食費や寮費は毎日とられるので、結局手元にお金はなくなって、やってゆけなくなった。

 仕事場を飛び出して、手配師に相談したら、いまは探しても仕事がないので、中村区役所にいって、なにかの申請をしたらどうだとすすめられて、やってきた。この季節に野宿は辛い。とにかく泊まる場所がほしい。

 相談者たちは、やはり、解雇されても、しばらくは手元のお金でなんとかしようとして、仕事を探すものの、全く見つからず、手元のお金が数百円になって、野宿をして、そこで、なんらかの経緯で中村区役所の話を聞いて、フラフラになりながらたどり着く、というパターンが多いことです。1月になって寮を追い出された人もいますが、10月に解雇になって、いままで、なんとか自力で粘っていた人もいます。

 契約期間が満了しても、それまでは自動的に更新されていたのが、更新されずに解雇された人が多くいます。また、住み込み派遣の人だけでなく、いろいろな業態の人たちにも、不況のしわ寄せが始まっていることも分かりました。

 中村区役所の連日の相談者の数は、以前の平均100人前後から、平均80人ほどと、一見減っているのですが、これは、対応の手際(生保までの手順)が良くなったのと、ほかの区役所にも負担を分散させているからで、実数としては減ってはいないようです。

 愛知県下では3月に数万人が解雇される、という予想もありますが、手元にお金がある間は、みんな自力でがんばろうとするので、その人たちが相談者として役所を訪れるのは、数ヵ月先になるかもしれません。当初は、生活困窮の人が増えるのは、3月がピークではないかと予測されていましたが、表に出始めるのは、もう少し先になりそうです。これから数ヵ月が、本当の正念場だと思います。

※1 主に日雇い労働者向けの、1泊1000円〜2500円の宿のこと。


お昼には、区役所の外に炊き出しの列ができる。(17日撮影)お昼には、区役所の外に炊き出しの列ができる。(17日撮影)

 
このような時代なので、愛知県三河地方の大都市・岡崎でも、派遣切り相談会が開催されます。この相談会では東京の派遣村のように、泊まったりすることはできませんが、この相談会は、相談したことを証明する書類を出し、それを持って次の週に役所に行くと、何日か後でも、23日の月曜日にさかのぼって保護の申請や相談が行われたことにしてくれるそうです。月曜日は、どこの役所も相談が集中することへの配慮だそうです。また、相談する自治体は、前日に何処に泊まったか、ということがポイントとなり、たとえば碧南で野宿をした人が岡崎で相談した場合、碧南市に申請をするようです。名古屋の場合は多すぎるので岡崎でよい、とのことでした。

◇ <派遣切り、雇い止め、住居が無いなど困っているみなさんへ。雇用、住宅、生活保護、多重債務、医療・健康、よろず相談会 >

 昨今、「派遣切り」・雇い止めにより、数万人規模の非正規労働者が仕事と住まいを奪われ、帰る家がない多くの非正規労働者がホームレス状態に追い込まれています。雇用を打ち切られた方、3月末に「派遣切り」・雇い止めで失業するおそれがあるみなさん。ぜひ、この機会にご相談ください。相談は無料です。

日時:3月21日(土)10 時〜17 時  22日(日)10 時〜16時
会場:東岡崎・岡ビル百貨店3F 岡崎市明大寺本町4-70 (名鉄東岡崎駅徒歩0分)
相談内容:雇用・労働相談、住宅相談、医療相談、生活保護相談、多重債務相談、その他生活全般の相談

 相談員は弁護士、司法書士、医師・看護師、精神保健福祉士労働組合役員、市民ボランティアなどの専門家。

※会場で宿泊はできません。

主催:愛知派遣村実行委員会 後援 愛知県弁護士会
実行委員長:藤井克彦(笹島診療所) 副委員長 水谷英二(司法書士)、柘植直也(弁護士)

連絡先(期間中のみ)
本部事務局:森 弘典(弁護士) Tel 090−1727−1920
現地事務局:高?美奈(弁護士) Tel 090−1236−7268

※電話での相談は受け付けていません。相談のある方は当日、会場にお越し下さい。
◇ ◇ ◇
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名古屋派遣切り最前線・被害者が明かした名古屋・名東区役所の“水際作戦”

Esaman2009/02/26
失職などのために生活保護を申請する人を、自治体の窓口がアレコレ?注文?をつけて申請させない、?水際作戦?に泣かされるケースが、問題化している。名古屋市名東区役所で、ひどい目に遭った男性の話を聴いた。ハローワークの親切な職員の勧めで区役所を訪れたが、資産状況などを聞かれたので、申請を受理してくれる、と思ったら、なんのかんのと言われ、引き下がらざるを得なかった。男性は後日、別の区役所で申請を受理されたが、役人は法律に詳しくない申請者に、違法な言いがかりを付けて、申請をハネつけていたのだ。彼の話を詳しく報告する。

http://www.news.janjan.jp/area/0902/0902248179/1.php

中村区役所2階に張られた張り紙。実際には雇用促進住宅はそんなに空いてない模様。中村区役所2階に張られた張り紙。実際には雇用促進住宅はそんなに空いてない模様。

 2月23日。泊り込み事件が発生し依然として生活相談の列が続く名古屋市・中村区役所に行ってきました。この日の相談者は107人。以前と、ほとんど変わっていません。100人を超す相談者のうち、新規で来た人は約20人ほど、とのことでした。1月5日から、延々と続いている相談者の列。延べ人数では1,000人を超えていると思われます。

 中村区役所では、1月だけで400人の生活保護の人が増えているそうです。これは、職員の数にして丸々5人分の仕事が増えているのだそうです(名古屋市職員向けの新聞より)。そういえば、この日の相談窓口にも「臨時職員」という腕章をつけた若い女の人が座っていました。

 相談者たちの支援者によると、連日増えた生活保護相談の人の中には100人ほど、居宅での生活保護の人たちも含まれているようだ、とのことでした。厳しくなっているのは、ホームレス状態になった人ばかりではない、ということのようです。

 支援活動を行っている人が、最近紹介が始まった、高齢者用というか生活保護用というか、そのような感じに特化した新しいマンションのパンフレットを見せてくれました。

 その写真によると、6畳ほどの部屋にベットがあり、液晶テレビがあります。トイレ、風呂は共同です。1階に食堂があり、1日に2食、出るそうです。1日2食で月の食費が36,000円。昼食はナシ。家賃などを合わせて、月に95,000円ほど掛かるとのことでした。

 生活保護は8万円ほど。家賃として別に35,000円まで出ます。手元に残るのは、2万円前後になり、その中で生活をすることになるそうです。これは、いままで紹介されていた別の業者のものと、昼が出ないというだけで、ほぼ同じような条件だそうです。

貧困ビジネス」のようなものが、確実に増えているようです。対応は施設にもよりますが、いろいろと難癖をつけられたり、追い出されたりする例もあるとのことでした。

 この日、タライ回しをされて、やっとで生活保護の申請が通った人の話を聞くことができました。

 この方が申請を行ったのは名東区名東区は中村区の反対側、名古屋市の東の端、長久手などに隣接して、高速のインターチェンジなどのある、東の玄関口の区です。

 そこの区役所に12月25日、生活保護の申請に行ったそうです。仕事を失い、友人宅に駆け込ん、そこからハローワークに通っても、全く仕事がなく、ハローワークの職員の勧めで生活保護の申請行った、とのことでした。

 しかし、窓口では、色々と文句をつけて追い返されてしまいます。ハローワークで、生活保護の申請をと勧められて出向いた彼は、あまりの対応にショックを受けて帰ってしまいます。ここで、とても重要なのは、名東区は、この日に彼の資産状態や個人情報などについて聞き取りをしており、すでに生活保護の申請の要件が整っている、という点です(申請は口頭でも可能です)。にもかかわらず、区は嘘をいって追い返してしまっているのです。

配布する衣類の箱になっている、名古屋市の災害用乾パンの箱。期限の近づいたカンパンが「食べ物がない」という相談者に配られている模様。非常にパサパサしているが、味はよいと評判。配布する衣類の箱になっている、名古屋市の災害用乾パンの箱。期限の近づいたカンパンが「食べ物がない」という相談者に配られている模様。非常にパサパサしているが、味はよいと評判。

 彼は、ハローワークに再び相談に行きます。ハローワークの職員は、名東区の対応に驚きつつも、彼には仕事が全くないので、法律からいっても、生活保護をとれるはずだから、と彼を励まします。このハローワークの職員は、大変親切な対応をしてくれたそうです。
 
 ほかの相談者の事例でもそうですが、ハローワークの職員は実際に仕事がないことを痛感しているのでしょう、親切心があったり、生活保護の申請を勧めるという例を、よく聞きます。

 1月14日、彼は再び申請に行きますが、いま泊めてもらっている友人宅を出ないとダメだ、施設に入らないと生活保護は申請できない(両方とも法的根拠なし、つまり嘘)、といって追い返されます。支援をしてくれる司法書士の人とともに行き、食い下がると、医療扶助の申請は行うことができましたが、生活扶助と住宅扶助はダメだ、といわれました(これも、法的な根拠なし)。「医療扶助のみを支給してください」と書かないと、申請は下りないと言われます(これは脅迫か)。

 名東区の対応で非常にセコイのは、支援の司法書士の人が一緒にいる間は、生活保護申請を受け付けるような態度をしているのに、司法書士の人が帰ってしまうと、途端に手のひらを返して、申請させないという話になってしまった、ということでした。

 彼はこのときの経験を、「名東区の役人は、人を見て対応を変えている。非常に酷い。ハローワークの人も驚いていました。生活保護は法律で保障されている権利です。法律家が見ていないと、さっき約束したことも平気で反故にするという対応は、法律にも違反しているし、人間としても酷いと思います」と、怒りとともに語っていました。

 このような、生活保護申請を受け付けない、あからさまな「水際作戦」名東区役所は過去に何人殺したのかなと私は思いました。もっとも、このような対応は、名東区だけでなく、中村区役所以外のすべての区で、あまり変わらないようですが。

 1月30日、彼はハローワークの人に勧められて、中村区役所にたどり着き、なんとか緊急宿泊所に泊まることができました。このとき、それまで酷い目にあったので、何をどう申請したらよいかは考えられなくて、とにかく宿ができたということで、安心した、とのことでした。そして2月6日、やっとのことで、生活保護の申請をすることができたそうです。

 彼は、仕事をどれだけ探しても見つからず、ハローワークの職員に勧められて生活保護の申請を行ってから、実に2ヵ月間も、放置されていたことになります。法律では、生活保護の申請は、口頭でも可能であり、それを受けた役所は、2週間以内に申請の内容に誤りがないかを調査して、申請の可否を出さないといけない、ということになっています。
 名東区役所は、彼に資産状況や個人情報を聞き取りしています。これは生活保護の申請に必要な手続きのひとつですから、それを聞くということは、彼が口頭で出した申請を受理しているから、ではないのでしょうか。

 そうでないとしたら、「面倒くさいことになるぞ」と脅迫しようという意図でもあるのでしょうか。名東区役所は、明らかに法律違反をしていますし、申請に来た人に嘘を教えています。

名東区役所には、法律で保障されているのだから、申請をさせろといいたい。申請の書類を隠さずに置いておいてほしい。司法書士の人がやってきたときは、ヘイコラしているのに司法書士が帰った途端に態度を変えるのは酷い。相手が制度について詳しく知らないからといって、そこに付け込むようなやり方は、公務員のすることじゃないですよ」

 彼は、思い出しただけでも腹が立つ、という様子で、話をしていました。この件に関して、名東区役所に抗議をするそうです。


◇ ◇ ◇
非正規雇用と人権・貧困問題

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「アースデイあいち2009LOVE&ビンボー大作戦 バレンタイン便乗チョコ供養」開く

Esaman2009/02/25  
「チョコ坊主による、浮かばれないチョコの供養」が名古屋で行われました。主催は「ハケンぎりチョコ実行委員会」です。チョコを並べて読経のあと、チョコ坊主を先頭に、派遣切りロボ3体がJR名古屋駅方面へ出動、トヨタ本社ビルも訪問しました。「格差の実感」に、少しだけ迫れた気がしました。

http://www.news.janjan.jp/living/0902/0902238126/1.php


派遣切りロボ出動!(1)〜(4)・映像

チョコ供養in名古屋駅前ナナちゃん人形前・映像

 この企画は、反貧困活動とアースデイが協働し、全国インディーズ系メーデーのひとつとしても、大きな成果をあげた昨年の「LOVE&ビンボー春祭り」のスタッフを中心に、各地で開催されたメーデーアースデイ、大阪や洞爺湖で開催されたP8(貧困者末端会議)、ハツモウデモや「越冬」などでつながった人々が計画したもので、主催者は「ハケンぎりチョコ実行委員会」となっています。

 この実行委員会は、その名のとおり、ハケン切りで生活に困っている人たちへの連帯と、派遣切りが社会問題になる前から生活に苦しんでいた人々、義理チョコしかもらえない「非モテ」の人々、義理チョコを用意するのが大変な人々などへの連帯の意味もこめて、もじってつけたものだそうです。

 ・派遣切りロボ出動!? 名古屋駅前でチョコ供養開催

笹島の交差点にさしかかるチョコ坊主一行。通行人の笑いと注目を集める。笹島の交差点にさしかかるチョコ坊主一行。通行人の笑いと注目を集める。

 この日の企画としては「チョコ供養」と「派遣切りロボ出動」が計画されていました。なんでも、この日の企画、当初は「バレンタインを粉砕しよう」と言い出されたものだそうですが、集まってきたひとたちから

 「粉砕するのはもったいない」
 「なんだか月並みでつまらない」
 「モテたくないかと言うと嘘になる」

という意見が出たことから、粉砕したい人だけ粉砕しよう、ということになり、話し合いの中ででてきたアイデアをもとに「チョコ坊主による、浮かばれないチョコの供養」となった、とのことでした。

 チョコ坊主は、供養が好きな人(?)がお経を練習して頭を丸めて扮装したもので、正式な坊主ではないそうです。

 「派遣切りロボ」も、話し合いの中ででてきた面白企画で、ただ反対するのではなく、通行人の人たちにも喜んでもらって巻き込める企画として考えたものだそうです。

 夕方、名古屋駅裏手にある彼らの「アジト」から、段ボールでつくられた3体の「派遣切りロボ」を前に、チョコを並べて、お経を読み上げたあと、チョコ坊主を先頭に、派遣切りロボが次々と出動してゆきました。

 驚いたのは、ロボも坊主も、衣装のままで「出動」したことです。会場である名古屋駅のナナちゃん人形前までは、1駅分ほどの距離がありますし、ロボの視界はとても悪そうです。

名鉄の警備員に質問されるロボ。警備員もさすがに苦笑していた。名鉄の警備員に質問されるロボ。警備員もさすがに苦笑していた。

 古い民家の多い笹島地区の薄暗い路地裏を、チョコ坊主が先頭に立って、時々鐘を鳴らしながら歩いてゆきます。その後ろを、無言の派遣切りロボが続いてゆく様子は、なにかの亡霊の行進のようで、不思議な光景でした。狭い道を時々すれ違う自転車の若者やおばちゃん達が、いきなり現れた不思議な光景に対処できず、驚いたり、声を出して笑いながら通り過ぎてゆきます。

 いよいよ笹島の交差点をとおって、ナナちゃん人形のあるエリアに到達。「ナナちゃん人形」とは、よく待ち合わせ場所として利用される、名鉄名古屋駅前の商店街にある巨大なマネキン人形です。スイス製で6mあるので、頭が屋根に固定されています。季節によって、ハッピを着たり水着を着たりしています。この人形の周りは、露天商の人がいたり、音楽をしている人がいる、人通りの多いエリアです。

 現場では、すでに派遣ぎりチョコ実行委員会の人たちが来ていて、マイクで情宣をしていました。バレンタインデーの問題や、チョコの生産現場の問題を訴えたり、ヘンな歌を歌っている人などがいて、非常にオカシナ、しかしユルい感じになっていました。

 ここでチョコ坊主の人が、木の箱で祭壇をつくり、ロウソクとカーバイドランプ(カンテラ)を置き、あらかじめ用意したチョコを山積みにして、読経を始めました。

トヨタ本社での派遣切りロボ。つい笑ってしまう警備員。トヨタ本社での派遣切りロボ。つい笑ってしまう警備員。

チョコ坊主のコメント

 「チョコ供養と銘打ったものの、さすがに要らないチョコをくれる人はいないのではないかと思ったので「見せチョコ」を用意しました。しかし、呼びかけてみると、通行人でチョコをくれた人もいました。どのような経緯のチョコかは詮索せず、ただ供養するのみです。浮かばれないチョコ、チョコを作る過酷な労働に携わった人、買った人、もらった人の思いなど、色々なものをまとめて供養したいと思います」

とのことでした。この日は風が強く、ロウソクの火はすぐに消えてしまいましたが、カーバイドランプはずっと点いていました。

 いっぽう、「派遣切りロボ」はというと…チョコ祭壇の周りでナナちゃん人形の下をくぐってみたり、周囲をウロウロしながら、通行人の笑いを誘っていました。このあと、ロボ一行は、名古屋駅の中を縦断して、駅員の失笑を買ったり、警備員に笑われたりしたそうです。

派遣切りロボの操縦士(?)の人は

 「このロボは、同じ段ボールを選んでつくってあり、素材にもこだわっているものです。視界が狭いので、周りの様子がよくわからないのですが、がんばってと言ってくれる人が多くて、とても人気がありました。この日は風が強かったのですが、中に入っていると寒くないので、結構楽しかったです。」

とのことでした。たしかに、この日は、かなり寒かったのですが、ロボの中の人たちは、寒くはなかったようです。

 このあと、派遣切りロボの人たちは、トヨタ本社ビルや、ミッドランドスクエアに出かけました。

 さすがに、トヨタ本社ビルの中には入れませんでしたが、窓から覗いてみたり、出てきた警備員と話をしたりしました。トヨタ本社ビルの警備員の人は「テレビにだったら出れるかもね」という、微妙なコメントをしていました。トヨタマークが入っていますし、「金よこせ」とか書いてあるので、さすがに、難しいのではないかと思います。

 トヨタ本社をチラっと覗いたあと、寒くなってきたのと、派遣切りロボの契約期限(段ボールの強度)がなくなってきたので、退散することになりました。来たときと同じく、チョコ坊主を先頭に、鐘を鳴らしながら、みんなでゾロゾロと「アジト」へ帰り、鍋を食べて解散しました。

 「格差の実感」に、少しだけ迫れた気がした1日でした。

◇◇◇

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アジトでのおつかれ会の様子。「供養」したチョコは、みんなでおいしくいただいた。アジトでのおつかれ会の様子。「供養」したチョコは、みんなでおいしくいただいた。

東海生活保護利用支援ネットワークが生活保護支援の研修会を開催

Esaman2009/02/14
生活保護支援のボランティアのための研修会が開かれ、パネラーからは、1人で生活保護の申請にいくと追い返されることが多いが、弁護士や司法書士などが一緒にいくと、なんの問題も無く通ることが多い。これは、本来的にはおかしい。生活保護は誰でも申請できる権利の一つであるなどの話が出されました。参加者の何人が実際にボランティアなどの協力ほしてくれるのか、よくわかりませんが、それでも、期待したいと思います。

http://www.news.janjan.jp/area/0902/0902066901/1.php

会場の様子。たくさんの人が参加している。会場の様子。たくさんの人が参加している。

 2月5日、東海生活保護利用支援ネットワークの主催で、生活保護支援ボランティアのための研修会が開催されました。会場は金山にある司法書士会館です。東海生活保護利用支援ネットワークは、結成されてまだ間もないネットワークです。2007年に開催された生活保護制度を考える集会で、結成の話が出ていたものです。会場には、100人近くの人たちが集まっており、パネラーの話に耳を傾けていました。会場にはカメラを構えたマスコミの姿もありました。 

パネラーの話を、ごく簡単にまとめます。

弁護士の森弘典さん、司法書士の水谷英二さんの話 

一人で生活保護の申請にいくと、ケンモホロロに追い返されることが多いが、弁護士や司法書士などが一緒にいくと、なんの問題も無く通ることが多い。これは、本来的にはおかしい。 

また、法律家が一緒に行っても、おかしな対応をされることもある。悪名高い北九州では「北九州ではこうしています」ということで、申請に付き添うのを邪魔したり、書類を受理しなかったりした。これは法的には全く根拠の無いことです。 

 生保の申請に同行しようとすると「プライバシー」を理由に断られることがありますが、本人の同意があれば大丈夫です。 

 また、それでも「家族のプライバシーが」などといって断ってくる場合もありますが、友達同士で家族の話をしてもプライバシーの侵害にならないのと同じく、本人の同意があれば問題ありません。 

 若い人などが申請に行くと、ひどいことをいわれて追い返されることが多いですが、これも法的には全く根拠の無いことです。実際、弁護士などがついていくと、何もいわれずにすんなり通ることも多いです。ひどい話です。


カメラを構えるマスコミの姿も。カメラを構えるマスコミの姿も。

笹島診療所の藤井克彦さんの話 

 中村区役所は、連日の支援の監視の中で、急速に変わりつつあります。行政は、働ける人は、とにかく自立支援センターに入れたがります。その際には「生保だと働いて稼いだら返さなくてはいけないが、自立支援センターだと全部自分のもの」という説明をして、多くの人がだまされてしまいますが、生保の場合、稼いだ額が多かったら戻しているだけで、損をするわけではありません。 

 このような対応に対して、名古屋市を批判するだけでは不十分です。まずは自立支援センターに入れる、というのは厚労省が言っていることですから、国のレベルで変える必要があります。 

 中村区役所には、連日100人の人が並んでいますが、新規の人は、平均するとだいたい15〜20%です。 

 また、行政は、生活保護の申請を前提としたアパートの入居を斡旋していますが、そのアパートが果たして当事者にとってよいかどうかは、まだよくわかりません。時間も余裕も無いので、ゆっくり考えることができません。 

 たとえば、生活保護の需給が行われる通帳を業者が預かっていたり、月の途中から入った場合、料金を日割りで支払うはずが1ヵ月分全部取っていたり、といった例が見られて、その都度、抗議して止めさせています。 

 最後に、このネットワークの代表で、法テラスの代表でもある、弁護士の内河惠一さんが挨拶をして、終わりました。 

 この方、若い頃に生活に困って生活保護を申請したことがあったそうです。そのときに「嫁が来なくなる」などと言われたそうですが、実際には、立派な嫁も来て、弁護士にもなれたわけで、生活保護は誰でも申請できる権利の一つである、という話をされていました。 

 集会が終わって出る直前、参加者の一人に「支援の方ですか」と声をかけられて、実際に「支援」を何度もしたことがあるので、ボランティアへの参加を希望しているのかと思い「そうですよ」と返答すると…… 

 「アパートに入居しても、どこかに行ってしまう人はいるのではないか」などと聞いてきます。たしかに、野宿生活が長いと、自炊生活が難しい人もいますが、そのような方をサポートする食事会などもありますよ、と返答するが、なにやら納得のいかない感じで「仕事はいくらでもあるんじゃないのか?」などと聞いてきます。 

 生保を取ってアパート暮らしをした人たちの行く末を心配しているのではなくて「働かない怠け者」との証言をほしがっている様子だったので「いまは、仕事は20代の人でもありません。ハローワークでも資格要件の無い仕事はゼロ。何年も派遣で働いている人は余裕も無く、運転免許すら取れない人も多いですが、これは自己責任ではありません。また、ある程度の年齢の方の場合、病気などもあり、働けというのが非現実的な場合もあります。ハローワークなり、生保の窓口なり、実際に現場を見に行かれたことは?」と聞き返したところ、どこかに消えてしまいました。 

 なんともはや、何をしに来ているのか、という反応なのですが、生活保護支援のための研修会ですら、そういう人が居るのかと、少し驚いた次第です。まだまだ「生活保護を必要とするのは、仕事をしないナマケモノだ」という偏見が根強いということでしょうか? 
 会場に集まっていた人たちのうち、何人が実際にボランティアなどの協力をしてくれるのか、イマイチよくわかりませんが、それでも、期待したいと思います。

生保申請の現場について対談する水谷さんと藤井さん。生保申請の現場について対談する水谷さんと藤井さん。


●東海生活保護利用支援ネットワーク
052−911−9290(電話受付:火・木13時〜16時)

集会名 愛知派遣切り抗議大集会
日時 2009年2月22日 午後1時から午後4時まで
場所 東海テレビ・テレピアホール 入場無料 
主催 愛知派遣切り抗議大集会実行委員会
実行委員長 弁護士 宇都宮健児反貧困ネットワーク代表)

●集会内容
1、派遣切り、雇用止め当事者の報告
2、派遣法についての緊急特別立法対策について
3、緊急融資制度の紹介、議員からの報告、意見表明等
4、日弁連、年越派遣村実行委員会等からの報告
5、全国の派遣村の状況、ワンストップ相談会について

●集会後、東海テレビから名駅ミッドランドまでデモ(2.8km)


◇ ◇ ◇
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派遣切りロボ出動!? 名古屋駅前でチョコ供養開催

Esaman2009/02/16
2月14日、バレンタインで賑わう名古屋駅前で「アースデイあいち2009 LOVE&ビンボー大作戦第一弾!!! チョコ供養」が開催されました。

http://www.news.janjan.jp/area/0902/0902157463/1.php

チョコ供養in名古屋駅前ナナちゃん人形前・読経の様子・映像(45秒)

行進する派遣切りロボ「使い捨てロボ」「QCサークルバンザイ」「I LOVE TOYOTA」などと書かれている。行進する派遣切りロボ「使い捨てロボ」「QCサークルバンザイ」「I LOVE TOYOTA」などと書かれている。

 2月14日、バレンタインで賑わう名古屋駅前で「アースデイあいち2009 LOVE&ビンボー大作戦第一弾!!! チョコ供養」が開催されました。

「チョコ供養」の様子。山積みになったチョコの前で読経をしている。「チョコ供養」の様子。山積みになったチョコの前で読経をしている。

 この企画は2009年のビンボーアース(メー)デイに向けたプレイベントとして「ハケンギリチョコ実行委員会」が開催したもので、バレンタインデーに便乗した企画です。

 鐘をならしながら進む「チョコ坊主」を先頭に、ダンボールで作られた「派遣切りロボ」1号、2号、3号は、中村区役所方面から登場し、ナナちゃん人形周辺で、読経をしながらパフォーマンスを行いました。

 一行は、

「チョコの少なくない部分は、児童労働や不当な搾取で作られています」
「わたしそびれたチョコ、ご不要になったチョコを回収して供養します」

 などの呼びかけを行い、行き交う人々の笑いを誘っていました。

名古屋地下街を探検する派遣切りロボ。通行人から「がんばって」との声援が飛んでいた。名古屋地下街を探検する派遣切りロボ。通行人から「がんばって」との声援が飛んでいた。

アースデイあいち2009・LOVE&ビンボー作戦本部
アースデイあいち2009 LOVE&ビンボー大作戦第一弾!!! チョコ供養
LOVE&ビンボー春祭り アースデイあいち2008 開催
アースデイ愛知2008に参加してきた

 派遣切りロボ、名古屋駅前のツインタワー前(トヨタ本社ビル前)で記念撮影。 派遣切りロボ、名古屋駅前のツインタワー前(トヨタ本社ビル前)で記念撮影。

名古屋派遣切り最前線・野宿しつつも仕事を探す若者

Esaman2009/02/08
何度か報告を書いている、派遣切り最前線のひとつ、名古屋・中村区役所の続報です。

http://www.news.janjan.jp/area/0902/0902056873/1.php

中村区役所、午前中の様子。多数の人が整理券を手に待っている。(写真は全て2月2日撮影)中村区役所、午前中の様子。多数の人が整理券を手に待っている。(写真は全て2月2日撮影)

 何度か報告を書いている、派遣切り最前線のひとつ、名古屋・中村区役所の続報です。

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 1月5日の中村区役所の仕事はじめ以来、現場に来れる人同士で対応してきましたが、支援活動の長期化に伴い、実行委員会が立ち上がりました。

名称:名古屋生活保障支援実行委員会(仮称)
連絡先:〒453−0014
名古屋市中村区則武2−8−13笹島労働者会館3笹島診療所気付
開所日時:火・金曜日、午前9時30分〜午前12時30分
電話番号、メールアドレスなどは、近日中に取得する予定です。

●笹島診療所が連絡先になっていますが、診療所の活動時間中に多数の電話がかかると、本来の活動に支障が出てしまうので、電話での問い合わせは、なるるべくお控えください。

 また、中村区役所では、生活保護の申請がOKになってもなお、連日100人を超える人が並んでいます。毎日やってくる100人のうち、だいたい30人ほどが新規申請の人、残りが通院や宿の更新手続きで継続して来ている人のようです。支援の人たちは、訪れた人たちに聞き取りをして、申請が当人の意志に沿った方向で受理されるように、手伝っています。ずっと支援に関わっているスタッフの話によると……

 「申請を受理しなかったり、当人の希望とは違う内容に変えてしまったりする『水際作戦』は、支援のひとたちの活動も功を奏してか減ってきている。また、非常に厳しい現実から、中村区役所の職員の対応も、全体としては、少しづつ良くなってきている。しかし、中村の職員にも、一部とはいえ、酷い対応をする人もいるようだ。また、応援で来ている職員の中にも、その人の職場ではそのような対応をしているのか『水際作戦』のようなことをする人も時々いる。そのようなこともあるが、全体としては、よい方向に変化しつつある中村の現場をみて、各区役所の職員も、水際作戦の間違いを学んで帰って、それぞれの区役所での対応を変えてほしい」とのことでした。


 現場での詳細な話は、前回の記事でかいた通りです。変化としては、徐々に若い人の姿が目立つようになっています。若い人たちの多くは、派遣切りにあって路上に出た後も、所持金の続く限り自力でがんばって、地下鉄や高架下、非常に寒いときだけネカフェなどで寝泊まりしつつ、それでも職を探して荷物を抱えて歩き回り、本当にどうにもならなくなってから、人に聞いたり、職安で聞いたり、警察に聞いたりして、中村区役所にたどりつく、というパターンが多いようです。「仕事が嫌だから」路上生活をしているわけではありません。まだ20代でも仕事がないのですから「派遣切りの若者」以外の人たちは、もっと惨い状態にあります。

 今回は、中村区役所で出会った、典型的な「派遣切りの若者」の話を紹介します。

法律家による相談窓口も開設された。月・金の午前中に相談に乗ってくれる。法律家による相談窓口も開設された。月・金の午前中に相談に乗ってくれる。

 「10代で故郷を出て、ずっと住み込み派遣で働いてきた。多くの場合、住み込み派遣の待遇は悪い。家賃や光熱費などを引かれて、手元に残る金額は10万円を越すことは絶対にない。多くの場合、8〜9万。生活保護と同じ程度。いままで働いた中では、滋賀県での派遣の仕事がもっともひどいところで、『仕事がないから明日から1週間休んでいいよ』などと言われて、仕事がなくなることがあった。『休み』といっても、給料は出ない。でも家賃や光熱費は取られる。

 仕事のある日は、家賃や光熱費分として、1日数百円の補助が出ていたが、それもなくて全部自腹になる。そこでの給料は、色々と引かれた後、月に2〜3万しか支払われないこともあった。住み込み派遣の仕事は、ある日突然『出て行ってくれ』といわれる。

 その日に突然解雇されて、家を出ていくことになったことも4〜5回あった。ひどいところでは、出て行けと言い出したその日に、アパートの外に荷物を出してしまって、そのまま放置。次の住み込み派遣先が決まるまで、野外に荷物が放置されることになったことも。出ていくまで、1週間ほど猶予があるときもあるが、その日にうちに出ていけ、という話もたくさんあった。担当者によるのかもしれない。そして、追い出されてから、次の仕事先を探すことになる。もちろん家はないので、探すとしたら、また住み込み派遣の仕事しかない。その間は野宿。

 多くの場合、荷物を送る先もないので、自分で買った家財道具を置いて出ていくことになる。そんな生活を10代のころから繰り返してきた。今回は、12月のはじめに、50人ほどまとめて、その日に解雇を言い渡された。トヨタと関連のある製造業。すぐに出ていけと言われたが、労働基準監督局に電話をして指導してもらい、なんとか年明けまでは住めることになった。そして年を越してまた住み込みで派遣の仕事を探したが、いつもと違って、まったくみつからない。

 夜だけネカフェに泊まり、昼は地下鉄などで過ごしながら、仕事を探し続けた。障害者用のトイレなどで寝たこともあったが、警察を呼ばれそうになったこともあった。とても惨めな気持ちになりました。どうしようかと路頭に迷っていると、駅前の路上でアクセサリーを売っている人に、笹島診療所のチラシをもらった。その人は、自分でネカフェに泊まりつつ仕事を探しても、じきにお金がなくなって、気力もなくなってしまうだけだから、早めに相談に行ったほうがいい、ということを教えてくれた。

 でも自分の力で仕事を探そうとしたが、案の定、まったく仕事はなく、言われた通りの状態になってきた。それでも、1枚50円のカイロを買って、なんとかしようとしていたけど、どうにもならなかった。暖かい飲み物は、すぐになくなってしまいますが、カイロは10時間以上持つので良いです。野宿していて、足の根元にカイロを張っておくと、体が冷えないことがわかりました。そうしながら、何度ハローワークに行っても、連日仕事はゼロ。募集件数がゼロなので、面接もできない。

 よく『贅沢言っているだけで、仕事はあるはずだ』などといっている人がいるけど、あれは嘘です。募集は1件もありません。もっとも、住み込み派遣の仕事も、いつもあって4〜5件なので、多いわけではありませんが、いまはゼロです。自分のつけない、専門的な資格のいる求人も、全体で50件もありません。そんな状態になって、路上アクセサリー屋さんにもらったチラシを思い出して、申請にやってきました。あのチラシがなかったら、今頃、どうなっていただろうと思います。

 派遣で働いている間は、仕事もきついし、手元に残るお金もないので、とても貯金できる状態ではありませんでした。毎回、家財道具を捨てて、体ひとつで追い出されることになって、次の仕事を探すといっても、家のない状態で探すハメになっていました。一旦、このような状態になると、次の仕事の選択肢も、住み込み派遣しかなくなります。そして、同じことの繰り返しになります。仕事がなくなるのと同時に、家もなくなります。次の仕事がみつかっても、多くの場合、次の住み込み派遣の現場も、まったく別の場所ですから、荷物を預けられる友人もいませんし、職場でできた友達は、ほとんどの場合同じ日に路頭に迷うことになります。

 住み込み派遣では、もう二度と、働きたくありません。製造業などで派遣が認められている間は、自分のような目にあう人が、ものすごくたくさんいると思いますから、派遣という雇用形態は、禁止にしてほしいと思います。

 現在は、松竹梅という、ドヤで泊まっています。生活保護の申請が通ってアパートで暮らすことができるようになったら、今度は、住み込み派遣ではない仕事をみつけて、生活できるようになりたいです」

中村区役所、午後の様子。まだまだたくさんの人が待っている。中村区役所、午後の様子。まだまだたくさんの人が待っている。

 この若者、働くようになってから10年も経っていません。その短い間に「その日に解雇されて出ていくこと」を4〜5回も経験しています。さらには、その経験が、とくに「ひどい経験」というわけでもなかったようです。今回は、追い出されてすぐに次の仕事が見つからなかったことにより、野宿状態から抜け出せなくなっただけで、いままで何回も、短期間の野宿状態になっていたのです。彼の話を聞いていると、少し前に騒がれた「ネットカフェ難民」とほぼ似たような状態の「派遣難民」に、働いている間も陥っていたことがわかります。ただ、ネットカフェに滞在する時間が少ないのと、仕事は途切れ途切れでもあるので「見えない状態」になっていたのでしょう。

 この方の、今回の生活保護の申請は、半年などの期間の区切りはないそうです。噂されていた「半年限定で、生活保護専門の業者に入居して生保」という話は、彼の場合は適応されないようです。ですが、生活保護の人を対象にしたアパート業者(?)の入居案内は、まだ中村区役所の壁に貼ってあり、そのような入居の斡旋も、高齢の人の場合は行われているようです。

 「生活保護の人を対象にしたアパート業者」ですが、まさに「貧困ビジネス」だと批判する声もありますし、実際に、そうなんだろうと思います。ですが、高齢で生活保護を申請する人の中には、アパートでの、完全な一人での自炊生活が困難な方も、それなりにいます。笹島診療所では、生活保護を取ってアパート入居したあとの生活のことも、重要な支援として活動をしています。

笹島市民フォーラム2007、雨宮処凛さんトークライヴ 2007/12/11 (食事会の活動が紹介されている)


 実際、日雇い労働や、野宿生活が長かった人の多くが、いきなりアパートで自炊をするのは、料理が好きな人以外は、難しいかもしれません。そのような人たちを対象として、保護費の枠の中から運営できるようにしたアパートを「ビジネス」とするのは、それだけで悪いこととは、言いきれないとも、思います。ですが入居した人の話では「糖尿病食で、少なくて不満だ」「ほとんど手元にお金が残らない」「職員の対応が悪い」などという声も聞こえてきます。もっとも、糖尿病食が少ないのは、当り前なのですが、その「少なさ」が、はたして手抜きなのか、カロリー計算の結果なのかまで、取材した範囲では、よくわからないので、なんともいえません。

 最近では、中村区役所の現場には、マスコミの取材も、よく入るようになってきました。また、法律家の人たちが相談窓口を設置して、ボランティアとして活動してくれる、という強力な助っ人もやってきました。名古屋で「派遣村」ができるかどうかは、わかりませんが、今後とも注目していきたいと思います。
◇ ◇ ◇

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