「2ちゃんねる」発だったチベット弾圧反対のデモ隊 (JANJAN記事)

Ainu_puyarA2008-04-22

Esaman2008/04/22
中国によるチベット弾圧に反対する集会が、名古屋市若宮大通り公園で行われました。集まっている人たちはかなり似たような年齢層、似たような格好にみえました。不思議に思い、聞いて見ると、参加のきっかけは「2ちゃんねる」や「mixi」のコミュニティでした。
http://www.news.janjan.jp/area/0804/0804200294/1.php

若宮大通公園の東側、久屋大通り公園の南端でチベットの旗を掲げる人。
目次
P1.従来の市民運動とは空気が異なるデモ参加者
P2.名古屋で500人の動員はイラク反戦以来

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従来の市民運動とは空気が異なるデモ参加者
 中国によるチベット弾圧に反対し、「チベットに自由を」求める集会が、名古屋市若宮大通り公園で行われました。この日、集会とデモがあることは、筆者も知ってはいましたが、いったい誰が呼びかけていて、どこがやるのか? 名古屋で反戦運動平和運動界隈にすこしかかわりのある人も、よくわからなかったようなので、顔を出してみました。まず、会場近くにいくと、チベットの大きな国旗をもった人が路上に立っていて、集会場所のほうを指差しています。その方角に向かっていくと、高速道路の高架下の公園に、かなりの数の人たちが集まっていました。

 集会に集まっていた人々は400人ほど。集まっている人たちは、みな一様にチベットの旗をもったり、プラカードをもったりしていました。主催者の挨拶があり、これから行なわれるデモの説明がありましたが「市民運動」の人たちとは、かなり違う印象を受けました。このデモに際して、ボランティア保険に入っているが、喧嘩や衝突などのトラブルなどが発生した場合は、保険の対象外になるとのことでした。デモにいくのにボランティア保険にはいるなんて初めてききましたが、入れるものなんだなぁと、へんなところに関心してしまいました。

 また、集まっている人たちが、かなり似たような年齢層、似たような格好にみえることが気になったので、何人かの人に聞いてみたところ、普段は平和運動市民運動に参加したことがない人たちばかりでした。そして、このデモに参加することにしたきっかけは、「2ちゃんねる」や「mixi」のコミュニティで知った、という方が圧倒的に多かったのには驚きました。



若宮大通公園の通路にて、チベットの旗を掲げて通行人にアピールする人たち。
 どうやら、参加者の人たちは、日常生活では、チベットのことや政治活動、市民活動に興味がない人がかなりの数に上るようでした。普段は街頭に出ることや市民活動はしないのに、なぜチベットの問題には関心があって出てくるのですか、との問いには、言葉が詰まる方も何人かおられました。

 何人かのひとは、やはりチベットが酷い状態であるとか、中国が悪い、ということを話してくれましたが、情報源は、「2ちゃんねる」だったり、TVなどの聖火をめぐる報道だったり、「mixi」やブログなどだったりするようでした。

 集まっている人たちは『雑多な感じ』というよりは、ある程度の年齢層や嗜好性がみられるように思いました。年代としては、自分の年代前後。年齢は高くて40歳代まで。インターネットを介して情報源にアクセスしている、というか、多くの場合はインターネットといっても新聞というよりは、「2ちゃんねる」「mixi」などで情報を得ている。既存の政治活動や市民活動には無関心。場合によっては嫌悪感がある人も。全体的に、生活時間の中で、インターネットがかなりのウェイトを占めている人たちが多いように思いました。皆が持っているチベットの旗などのプラカードは、インターネット上でダウンロードをしてきたものも多いそうです。



デモ隊の先頭部分。チベットの旗が目立つ。
 集会のあと、デモ隊が出発しました。すぐに目に付くだけで、制服の警察官が40人ほど、ほかにも制服ではない関係者らしき人たちがそれなりの数いました。このようなものものしい警備になることについて、参加者の一人は、自分たちは平和に訴えたいだけなのに過激派のような扱いで驚いた。と話していましたが、これはむしろ少数意見でした。何人かの人たちは、警察の誘導によって無事にデモができてよい、ということを話していました。

 このあたりの発想方法は、いわゆる『活動家』の人たちはとだいぶ違います。そういった意味では、ほんとうに「一般市民」の人たちなのだなぁと思いました。

デモ隊のシュプレヒコールは、

チベットに平和を
ダライラマと対話を
ストップ・キリング
セーブ・チベット
チベット言論の自由
チベットに教育の自由を
チベットに宗教の自由を
パンチェンラマを返せ

 などでした。シュプレヒコールの内容は統一されているようで、マイクを持つ人は紙を見ながら話していました。


集会の様子。スカーフをしているのが主催者側のスタッフ。 デモ隊の最後尾。お坊さんらしき人が2人いる。



名古屋で500人の動員はイラク反戦以来
 名古屋で500人規模のデモが行なわれるのは、おそらくはイラク反戦の時以来なのではないかと思います。しかし、イラク反戦の時と比べて、デモ隊の人たちのシュプレヒコールがまったく同じである点、手に持っているプラカードなどが似たようなものである点、年格好が似た感じの人達が集まっている点、全体的に整然としている点などが、かなり違うという印象を受けました。デモ隊の最後尾には、お坊さんの格好をした人たちがいて、その周りには、前列のデモ隊とは随分印象の違う人たちが歩いており、存在はかなり目立っていました。

 デモ隊が逮捕者もケガ人もなく無事に行進することは、逮捕者が出たり『弾圧』が起こったり、さらにいえば『虐殺』が発生するよりも、良いことなのだろうと思います。ですが、同じ平和を訴えるデモとはいえ、イラクの時と比べて、なんだか綺麗に一色に染まっている感じがして、別の意味で怖い気もしました。

 今回のデモを企画した人は「活動家」とは違うので、いろいろとわからないところや、聞かなくてもいいような警察の「要望」などもきいてしまっている可能性もあります。それが悪い、というわけではありませんが、なんだか寂しい気もします。

 筆者は、いわゆる「反戦活動家」「市民活動家」の人たちが「一般市民」に(「政治の季節」のように)受け入れられなくなって、あるいは遊離してしまって、かなりの年月がたつのではないか、と思っています。また、それは無理からぬことだし、美学のような活動をしてきた「活動家」に、ほとんどの責任があると思います。

 ですが「活動家」達が一般市民から隔絶されて、そのまま高齢化してみんな死んでしまった後、単に「市民活動」が下火になるだけではなく、それまでの活動のノウハウや、隙間でなにかをするノウハウ、のようなものが継承されなくなってしまい、今後の大きなデモのスタイルも、今回ようなものになっていくのかもしれない。それは、デモそのものがないよりは良いけれども、なんだかマズイんじゃないか、という一抹の不安を感じました。

 また、単純に、既存の市民活動との連携や協力が、どうもあまりなさそうだ、というのも、少し気になるところでした。前述のとおり、既存の『活動家サイド』には、一般市民から敬遠されるような行動が見られるのも事実ですから。そのせいで連携がないのは自業自得だとしても、分断はもったいない話のように思います。

 今回のデモと、イラクの時のデモ。
 この印象の違いは、単に提案された世代や空間の違い(宣伝や提言は「mixi」や「2ちゃんるねる」上が中心だった模様です)なのか、それとも、なにか大きな課題に対する『市民』の行動のスタイルが、そのように変化してきているのか。どちらなのか、今後の動きに注目していきたいと思います。

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